糖尿病網膜症
1)糖尿病網膜症とは?
眼をカメラにたとえると、フィルムにあたる網膜という重要な膜があります。この膜は多くの血管で栄養されていますが、糖尿病で血液が粘稠になると、この血管がつまったり、血管に強いストレスがかかります。そのため、網膜に酸素や栄養不足がおこり、眼底出血などの網膜症が起こってくるのです。糖尿病網膜症は現在、成人の失明原因の1位となっている病気です。
2)糖尿病網膜症の症状は?
この病気の初期はほとんどの患者さんに自覚症状がありませんし、自覚症状が出てからでは手遅れであることも稀ではありません。
糖尿病網膜症が出てくるには、糖尿病になってから数年から約10年ぐらいかかることがわかっていますし、網膜症も早期に発見し適切な治療をすれば、病気の進行を抑えられる確率が高くなります。
また、網膜症以外にも、水晶体の濁る「白内障」・網膜症が重症になるとおこる「新生血管緑内障」・眼球の動きが悪くなる「眼筋麻痺」といった合併症が、糖尿病にはあります。糖尿病といわれたら、症状の有無に関わらず眼科で検査を受けて下さい。
3)網膜症の進行段階と治療
網膜症は、その進行段階で単純・前増殖・増殖の3期に分かれます。
1)単純期 | 網膜に小出血や蛋白質などの沈着がおこり、この時期は内科での血糖コントロールが一番重要です。眼科では、3~6カ月毎くらいで経過観察してゆきます。 |
2)前増殖期 | 小出血が増え、網膜の細い血管がつまってきます。また、軟性白斑というシミが多数みられるようになります。この時期は、網膜の血流が悪いところを正確に見つけるため、螢光眼底造影検査(血管造影)を行い、酸素不足から生えてくる新生血管という悪い血管の発生を防ぐため、レーザー光凝固術を行います。ともに外来で行うことが可能で、この時期に正確に診断・治療を受ける事が、今後の網膜症の進行を予防するポイントになります。 |
3)増殖期 | 新生血管がはえてくる時期の事を言います。前増殖期と同様に、通常レーザー光凝固術を行いますが、硝子体出血や網膜剥離を起こしてくると、治療は手術(硝子体手術)になります。硝子体手術を行うことで、8割の人は失明を免れることができますが、もとどおりリにまで視力が回復する事は大変困難です。 |
☆糖尿病性網膜症は、自覚症状なく進行し、失明に至る危険のある恐ろしい病気です。糖尿病と診断されたら、まず眼科を受診し、その後も指示された間隔できちんと定期受診しましょう。