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加齢性黄斑変性

1)加齢性黄斑変性とは?

眼には、カメラのフィルムにあたる部分が存在します。それが網膜です。眼の内側に張り付いた神経でできた膜です。ここで光を感じ取ります。その網膜の中に、物体を特に鮮明に、はっきりと感じることのできる部分があり、それを黄斑といいます。

加齢黄斑変性とはその黄斑に年齢的な変化・変性が生じて起こる病気です。また、加齢黄斑変性は50歳以上の高齢者の中心視力低下をきたす主な原因疾患で、日本では男性は女性の約3倍みられ、約15%は両眼性に発症します。欧米では失明原因第一位の疾患です。網膜がだんだんと萎縮してゆるやかな視力低下がみられる萎縮型、黄斑に新生血管を生じ時に急激な視力低下を起こす滲出型に大きく分類することができます。

 

2)加齢性黄斑変性の症状は?

物を見る中心である黄斑が障害されるため、視野の中心が見えにくくなり、視力低下が生じます。視力低下の度合いは患者さんによってまちまちですが、進行すると0.1以下に低下する場合もあります。周りは見えるが見たいところが見えなくなる、という症状が特徴的です。

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3)なぜ加齢性黄斑変性がおこるの?

網膜の奥に網膜色素上皮、ブルッフ膜という薄い膜、さらに奥に脈絡膜という血管に富んだ膜があります。加齢黄斑変性は、網膜、網膜色素上皮、ブルッフ膜の加齢性変化を元として発症します。この加齢性の変化によって萎縮型では網膜が薄くやせたようになり、滲出型では脈絡膜からの新生血管が網膜色素上皮の下、あるいは網膜の下に進展し、その血管がもろいため、出血や浮腫(むくみ)を生じます。加齢以外に喫煙、高血圧、肥満などが危険因子として考えられていますが、最近では特有の遺伝子異常を持った人に頻度が高いこともわかってきています。

 

4)検査はどうするの?

検査は網膜の状態をみるために、眼底検査をまず行います。滲出型ではさらに腕から造影剤の点滴注射を行い、眼底の血管を造影して新生血管の状態を詳しく調べます。光干渉断層計(OCT)と呼ばれる検査では黄斑部の断層像を簡単に調べることができるため、加齢黄斑変性の病態の理解に不可欠の検査となりつつあります。

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蛍光眼底造影で網目のような新生血管(矢印)が写し出されています。

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光干渉断層計(OCT)で新生血管(矢印)の断層像を見ることができます。

 

5)治療はどうするの?

ひとくちに加齢黄斑変性といいましても、病状や病気の状態が様々です。その病気の状態によって選択される治療法も変わりますし、病状の進行がなければ経過観察のみをする場合もあります。萎縮型加齢黄斑変性には残念ながら有効な治療が存在しないのが現状です。従って現在の治療の主体は滲出型加齢黄斑変性の新生血管からの出血や浮腫を抑え、視力低下を食い止めることを目的としたものになります。新生血管を伴う滲出型加齢黄斑変性を対象とした治療は光線力学的療法(PDT)と抗新生血管剤の眼球注射が現在の主流です。PDTは特殊な薬(光感受性物質)を腕からゆっくり時間をかけて注射し、薬が新生血管にたまってきたところで弱いレーザー光線を黄斑に照射することにより、周囲の網膜を痛めずに新生血管の活動性を選択的に抑えることのできる治療です。使用する薬の特性上、5日程度遮光(日よけ)することが望ましいとされており、初回治療に関しては入院にて治療を行っています。抗新生血管剤は新生血管の進行を抑える薬を強膜(白目の部分)から眼球に注射することで、新生血管の活動性を抑えることを目的とした治療です。先に述べた蛍光眼底造影やOCTでの結果を参考にして患者さん一人一人に合わせた最も適切な治療を選択するようにしています。

(文責:古泉 英貴)

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