単純ヘルペスウィルスによる眼の病気
1)単純ヘルペスとは?
単純ヘルペスとは、皮膚、粘膜、神経などに感染するウイルスの一種で、1型と2型に分かれており1型は口唇や眼周囲、2型は性器、肛門に住み分けています。1型のウイルスは口唇<こうしん>ヘルペス(熱の華)を引き起こすウイルスと同じです。 大部分の人は成人になるまでに、このウイルスに感染していますが、初めてこのウイルスに感染した場合、明らかな症状が出るのは1割位で、普通は症状ははっきりせず、口や喉の軽い腫れや痛みを感じる程度です。初感染後ウイルスはそのまま目や皮膚を支配する神経細胞の中に潜んでしまいます。 ところが、からだや皮膚の抵抗力の衰えた時などに急に出てきて暴れ出します。具体的には疲労や風邪で熱を出したり、強い日光を浴びたりしたときなどです。2型は上半身の病気には普通関係しません。
2)単純ヘルペスによる目の病気とは?
単純ヘルペス1型による目の病気で最も多いのは、角膜(目の表面をおおう透明の膜)の感染症です。これは繰り返し起こるもので、ごく稀に失明することがあります。また単純ヘルペス1型のうち、どの種類のウイルス株に初感染したかによって、感染の期間、重症度、薬の効き具合などはさまざまです。 単純ヘルペスウイルスによる角膜の感染は、その表面からはじまり、目は赤くなり、軽い痛みを感じたり、光に過敏になるといった症状が現れますが、それ以上にひどくはならないのが普通です。しかし、4人に1人の割合で2年以内に角膜の感染が再発することがあるので注意が必要です。 角膜のさらに深い部分に感染がおよび、角膜が白く濁ったり、目の中に炎症が生じたりすることがあります。単純ヘルペスによって角膜に慢性の潰瘍が生じると、たいへん治りにくいものとなります。 単純ヘルペスによる目の病気は、もう一方の目にうつることは稀で、他人にうつることもあまりありません。ただし、抵抗力の非常に低下している人では、単純ヘルペスが、目の角膜以外の部分(網膜など)や、体の他の部分(脳など)にうつることがあります。また、性器ヘルペスの原因となる単純ヘルペス「2型」によって目の病気が起こることはほとんどありません。
3)単純ヘルペスによる目の病気の治療法は?
治療法は病気の程度によって異なります。ゾビラックスという抗ウイルス剤の軟膏が特効薬ですが、なかにはこれに効かない場合もありますので油断は禁物です。 角膜を削ったり、内服薬を投薬する場合もあります。角膜の濁りがひどく、視力がかなり低下しているような場合には、角膜移植が必要になります。 単純ヘルペスによる目の病気に関しては、治療法を誤るとかえって病状が悪化することがありますので、必ず眼科医の診察を受けて下さい。