斜視手術
斜視とは両方の目の視線が同じ方向に向いてない状態です。各眼球には下図のような6個の筋肉がついていて、両眼合わせて12個の筋肉の共同作業で視線をそろえているわけですから、大変高度な協調作業といえるわけです。
斜視の原因はそれぞれを支配する筋肉の神経が麻痺する(麻痺性斜視)場合もありますが、多くは原因不明で12個の筋肉のバランスが僅かに崩れているためにおこっているものと考えられています。
斜視の治療は、屈折矯正と手術の二つに大きく大別できます。
1.屈折矯正は多くの場合遠視が原因になっておこる斜視の場合に用いられ、遠視の眼鏡をかけることで治癒します。また、ズレ角度が僅かな斜視の場合にはプリズム眼鏡といって光線を曲げる眼鏡をかけることで、ものが二つに見えるのを治療することもあります。
2.手術は目に付いている筋肉のバランスを取り戻すための方法です。外に目が向いているのなら、外についている筋肉を弱める、もしくは内についている筋肉 を強めればいいはずです。筋肉を弱める場合には筋肉のついている部分で一度切り離し(ここは腱といって結合組織だけです)、眼球の後ろの方に付け直すこと で、筋肉の張り具合が軽減して作用を弱めることができます。強める場合には前の方に付け直し余分な筋肉をきればよいのです。
手術は子供さんなら全身麻酔が必要ですが、高校生以上なら局所麻酔で入院せずにも十分おこなえます。1つの筋肉について30分程度の時間で済みます。術 後少し目が赤くなりますが、2週間程度で消退します。麻酔も注射ではなく目薬と筋肉の周囲に麻酔液を浸すだけですので痛みもほとんどありません。
視線がおかしくて悩んでおられる方は是非、斜視の治療を考えてみてください。両眼のバランスを治すことで両眼視といって、二つの目で同時にみることのメ リットが格段に向上することがあります。また、幼いころから斜視があり両眼視ができにくい場合でさえも周辺動的立体視といって、まわりで物が動くのがよく わかるようになる効果は期待できます。斜視の手術は見かけだけでなく、実もある手術なのです。